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夏の終わりに
第14章 困惑
倦怠感に包まれた体を抱きしめて、千里はそろりそろりと拝殿の影から脱け出した。

顔を上げると、閑散とした境内の中央あたりで浩人が立ち止まり待ってくれていた。
堪えていた涙が、頬を伝えたい落ちる。

「結局、……ほとんど観れなかったな。ごめん」

浩人が後ろめたそうに夜空を見上げると、千里は涙をそっと拭って微笑んだ。

「綺麗だったね」

……最後の花火も。


隣に並んで一緒に夜空を見上げ、躊躇いがちに浩人の裾を掴む。こっそりと浩人の横顔を盗み見してみても拒絶されている気配はない。
千里はほっと胸を撫で下ろして、再び満天の星を見つめた。


「……っ、帰ろう」

しばらくすると、浩人はそう言って千里を抱き寄せた。

「……うん」

言っていることと行動がちぐはぐだけれど、それさえ嬉しくて、千里は浩人の背中をぎゅっと抱きしめた。
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