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夏の終わりに
第15章 欲求
浩人は自然とにやけていく顔を隠すために顔を背けた。千里の反応に内心ほっとして、嬉しくて、自分が犯した数々の罪を忘れてしまいそうなほど舞い上がりかけていた。

「それとも、一緒に入る?昔みたいに」

「むかし……って、覚えてない」

恥ずかしそうに俯く、その姿に心臓が持っていかれる。

浩人は堪らず千里の腰を抱き寄せた。自分の昂りが千里の下腹部にあたり、体が震える。
突然の出来事に戸惑い見上げてくる千里に、怯えの色はなかった。唇を重ねると、おずおずと首にしがみついてくる。


―――い、いやあっっ!!


ふいに脳裏にこだました叫び声にぎくりとして、浩人は体を離す。

「ヒロ兄ちゃん…?」

気遣うように腕に添えられた手は、愛情がこもっているように思える。苦痛や恐怖に瞳を滲ませたあの時とは違う。

叫ばれたのは今ではない。

それでも浩人は、恐る恐る胸を押さえた。
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