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夏の終わりに
第15章 欲求
二度とちぃを傷つけたくない。

そう思っているのに上手くいかない。

謝りたいのになんて言えば良いのか分からなくて、浩人は口ごもる。

千里は今にも泣き出しそうな顔を左右に動かすと、浩人の、シワの寄った眉間を撫でた。その手が移動して、頬を包み込んでから肩へと下りていく。

背伸びをした千里が、ゆっくりと近づいてくる。

そっと重なった唇は冷たく、微かに震えていた。

離れていく千里を追いかけて、その唇を覆う。千里の震えが止まり、唇が温かくなるまで、角度を変え、ポイントをずらし、何度も啄ばんだ。

「は…んっ…ぁ……」

少しずつ千里の息があがり、しがみつく腕に力がこもる。浩人は小さく呻いた。


一度抱けば満たされる。脆く危なっかしい蜜月が終焉を迎えても生きていける。
そう思っていた。


とんでもない間違いだと、どうして気づけなかったのだろう。
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