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夏の終わりに
第15章 欲求
こういう反応を望んで自分のものを触らせたはずなのに、本当に拒絶されると酷く乱暴的な感情が湧きあがる。苦しくて、体が悲鳴をあげていた。

「たこ焼き器?」

平静を装って尋ねると、千里は何度もこくこくと頷いた。

「前に、お母さんが通販で買ってたの。せっかくだから取ってくるね」

浩人の心情など気づかずに、千里は浩人の横をすり抜けてキッチンを出て行く。
その後ろ姿を茫然と見送り、どす黒い思いがこぼれ出てしまうのではないかと恐れるように、浩人はゆっくりと息を吐き出した。

逃げなくてもいいのに。

いや、逃げて欲しいのか。

自分の心がどこにあるのか、判断に迷う。

「ヒロ兄ちゃん……」

戸口を見ると、去っていったはずの千里がそこに立っていた。

「イヤ…とかじゃ、ないからね」

声が震えていた。


「は、はは…」

千里が再び去っていくと、浩人は歪んだ笑い声を溢してその場に座り込んだ。
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