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夏の終わりに
第16章 危機
千里はすっかり囲まれてしまい、身動きがとれなくなっていた。

「気持ち良くさせたげるからさ、遊ぼうよぅ」

一際体格の良い男が、背後から千里を抱きしめる。じわじわと、畑の暗がりへと連れ込もうとしていた。
背中に冷たい水を浴びたように、全身の血が冷えていく。

地を這うようなクビキリギリスの声が止み、嘘のような静けさが漂っていた。
まばらに建ち並ぶ民家から漏れる灯りを、千里は初めて心細く感じた。
畑と田んぼしかないような集落では、夜中に出歩くような人はいない。仮にいたとしても、これだけ暗ければ気づいてもらえない可能性が高い。

ヒロ兄ちゃん、助けて…っっ!!

千里は声に出せないまま何度も叫んだ。

「は、離して……っ」

抵抗も虚しく、あっという間に畑の中へと連れ込まれてしまった。

一人が背後から羽交い絞めにして、残りの男達が囲むように千里を見下ろしてくる。
正面に立ったテッペーの手がゆっくりと近づいてきた。
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