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夏の終わりに
第16章 危機
浩人はのろのろと立ちあがり、食材を乱雑に広げたテーブルを眺めた。

千里を追いかけて、息が止まるほど強く抱きしめ、体を開かせ、千里の中に沈んでいきたいという激しい衝動が醜く渦巻いている。

しかし、そんなことをするわけにはいかなかった。
追いかけてしまっては、何のために逃げるように仕向けたのか分からなくなる。


浩人は冷蔵庫からキャベツを取り出すと、深く息を吐き出して一枚一枚を丁寧にはがし始めた。

手が止まり、自然と視線が窓の外へと泳いでいく。
畑の向こうに見える川辺家は暗く、静かにそこに佇んでいる。

千里は、また泣いているのだろうか。

そう思うだけで、心を刺されたような痛みを覚える。

ちぃ……

帰宅した時のまま、窓は全て締めきっていた。そのため、じっとしていても、体がじっとりと汗ばんでくる。
浩人は、額を流れる汗を拭うことなく、川辺家を見つめ続けた。
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