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夏の終わりに
第17章 咆哮
玄関を飛び出して、浩人は異様な静けさに眉を潜めた。
耳を澄ませば遠くから虫の音が聞こえてくる。しかし、家の周辺はひっそりとしている。
不気味な不安が風船のように膨らんでいった。


不意に、畑の辺りで物音がした。
視線をやってみれば、何か大きなものが動いているのが分かる。

家のすぐ裏は小高い山で、作物を狙って野生の動物が降りてくることは珍しくない。
だから、イノシシやシカなどがまた来ているのだろうと浩人は考えた。

しかし動物なら、虫が静まり返っている理由にはならない。

首を傾げた時、どこからか話し声が聞こえてきた。
それから―――、

ヒロ兄ちゃん……っ

千里が呼ぶ声も。


服の隙間から入り込んだ冷気が、体中を駆け抜けるのを感じる。
浩人は畑で蠢いているそれに向かって走り出した。
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