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夏の終わりに
第17章 咆哮
背後から羽交い絞めにされると、浩人は反動をつけて相手の顔に頭突きを食らわし、拘束が緩んだところを振りほどいた。
振り向きざまに殴り、畝を飛び越えてまた別の男に殴りかかる。


喧嘩という点だけを見るなら、平穏に生きてきた浩人に勝ち目はなかった。
しかし、男達は不慣れな畑に足を取られて苦戦している。畝の高さや幅、土の柔らかさも全て把握している浩人には有利な戦いだった。

持ち前の運動神経の良さにも助けられていた。

浩人自身も何度か殴られたが、痛みなど感じなかった。
アドレナリンに支配された体は凄まじい能力を発揮し、意識の端で捕える千里が浩人に力を与えている。

「てめぇ…ばっかり、いちゃつきやがって……」

テッペーが苦しげに発した声が、言葉として浩人の耳に届くことはない。
野太い叫喚に似た奇声が自分の喉から発せられていることに気づかないまま、浩人は男達を殴り続けた。
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