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夏の終わりに
第4章 沈黙
波打ったアスファルトにタイヤを乗り上げて車が止まると、千里は俯いたまま後部座席に身を乗り出した。
背もたれを倒したほうが手っ取り早く、楽にカバンを取れることは分かっているけれど、千里にはそのやり方が分からない。浩人に尋ねるのも躊躇われた。

「ありがとう……」

なんとか感謝の言葉を伝えて、浩人の反応も待たずに自分の家へと向かう。
車内で会話はなく、千里は何度か話しかけようとしたけれど、浩人の厳めしい横顔が拒絶しているように思えて出来なかった。


泣いてしまう前に、家に逃げ込みたい。
けれど、千里のそんな思いは、次の瞬間には脆く崩れていく。

「ちぃ、こっち」

驚いて振り返ると、浩人は北森家を指差していた。

「……えっ?」

「用心のため、うちに泊まるようにって、」

意味が分からず、千里は呆然と立ち尽くした。
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