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夏の終わりに
第6章 守護
繋がった手に千里がもう片方の手を重ね、恐々と持ち上げた。その手を、祈るように自分の額に押しあてる。

「……高校の時に、バイト先でつきまとわれてたの。つきあってほしいって、断ってもしつこくて……、」

震え始めた千里の頭を抱えて、浩人は自分の肩に押しつけた。


特に何もなかったのだと千里は話した。事実、その通りだった。
次第に狂気に満ちていく彼―――テッペーが怖くなってバイトを辞めて以来、彼と顔を合わせることはなかった。
変な人に絡まれたのだと―――やがて、その出来事も忘れていった。

けれどテッペーの声を聞いた瞬間、千里は当時の恐怖心を思い出して体を固くさせていた。忘れたつもりでも、体や本能はテッペーの異常な性質を覚えていた。

「……ごめんな」

耳元に届いた浩人の言葉に、千里は驚いて顔を上げた。
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