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夏の終わりに
第2章 帰郷
「美也ちゃんがヒロ君に全部頼んでくれたから」

千里の心情を読み取ったのか、千穂がのんびりとつけ加えた。

「ヒロ…兄ちゃん?」
「そう、ヒロ兄ちゃん。カッコ良くなってるわよ~。じゃあねぇ」

電話は呆気なく切られた。

「えっ、ちょ、ちょっと!」

慌てて呼び止めても、反応があるはずもない。

「えー……」

全部頼んだって……

もう一度だけ電話を鳴らしてみたけれど、返ってきたのは丁寧なアナウンスだけだった。

これって、電源切られてる?

千里はその場にズルズルと崩れるように座り込んだ。

千里が“ヒロ兄ちゃん”と最後に会ったのは四年前。今日と同じ、夏も終わりに近づいて、それでもなお厳しい暑さが続いている頃だった。
あの日、彼はひどく傷ついた顔をしていた。

傷つけたのは誰なのか―――、

千里は鈍く痛む胸を押さえた。
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