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夏の終わりに
第9章 白紙 ②
千里はなんとか食事を終えると、素早く洗い物を済ませてダイニングを出ていった。


浩人の布団を干しに二階へ上がり、けれど部屋に入ることはなく嗚咽をもらす。
一階からは、浩人の笑い声が漏れ聞こえてくる。

「…ぅう……っ」

幼い頃のように声をあげて泣いたら、浩人は飛んできてくれるだろうか。
そんな甘い考えが脳裏をよぎり、千里は目元を拭った。それでも一度溢れでた涙は止まるところを知らない。

「やだ、もぅ……」

簡単に泣いてしまう自分がひどく惨めで、情けなくて嫌だった。


「……ちぃ?」

いつの間にか電話を終えていた浩人が、階段の途中で立ちつくしていた。千里はビクリとして振り返り、慌てて何度も涙を拭う。

「何があった?」

浩人は最後の数段を一気に駆け上がってくると、千里の顎を持ち上げて涙を見つめた。
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