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夏の終わりに
第9章 白紙 ②
優しく気遣い、けれど不安そうな浩人の瞳に千里は喉を詰まらせた。

「……俺のせい…か?」

千里の目尻を親指の腹で拭って苦しげに顔を歪めた浩人に、千里は慌てて首を左右に振る

「ち、違うの。……これはっ、ゴ、ゴミが……っ」

言いながら顔を背けて必死になって涙を止めようとしている千里の顎に、再び浩人の指が添えられた。
格子戸から射し込む太陽の光を遮って、浩人の顔がゆっくりと近づいてくる。

「俺が、取ってあげる」

ぬるりと熱く濡れたものが瞼を覆い、震える舌先がたどたどしく蠢いた。驚いて固まっている千里を気に止めることなく、反対側の目も同じように舐められる。

「ヒロ兄ちゃ…ん……?」

激しく鳴り響く心臓が、心も思考も捕らえていく。息苦しくなって、千里は拒否するように俯いた。
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