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夏の終わりに
第9章 白紙 ②
体を縛りつける浩人の腕がほどけて、千里は強く突き放された。

荒い呼吸に肩を揺らして頬を上気させているのは千里のみ。浩人は僅かに胸が上下しているものの落ち着き払っていて、鋭く殺伐とした視線を千里に向けている。

「……戻せないよ」

何が起こったのか思考がついていけなくてぼんやりとしていた千里は、浩人の強張った声に小さく息を飲み込んだ。
体にまとわりついていた興奮が、一気に冷めていく。

「……な、に?」

千里は戸惑い、浩人へと伸ばしかけた手を下ろした。

怒らせた……?
でも、どう…して……?

仲が良かったあの頃に戻りたいのに、戻るどころか、生まれ初めて浩人を怒らせてしまった。

キスを返したら、ダメだった……?
でも……、

自分が何をしてしまったのか考えを巡らせても、答えは分かりそうになかった。
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