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縛師-Ⅰ-告られてから『ごっこ』の終わりまで
第4章 お姫様ごっこ
俺達は電鉄駅まで、普段なら30分ほどの道をゆっくり歩いた。
「小6だった」
俺は、俺の性癖が刻み込まれたあの頃を、あのときの千鶴を思い出して言った。
当時は知らなかった後妻とか連れ子という言葉やセックスの用語なんかも、今振り返ると理解もできるし意味もわかる。
それは多くの語彙や知識が増えたせいだ。
なので、その時は理解し切れなかった感情、言葉の持つ意味、道具や品物のことを今の知識で話すことにする。
「俺の家の斜め向かいに、かなり大きな家屋と蔵を持った屋敷がある。その家は遠い親戚で、親同士の仲が良かったから俺も良くその家に出入りしていた」
田村というその家は、2年前に小母さんが亡くなって、広い屋敷に政数(まさかず)という、叔父でも伯父でもない小父さんが一人暮らしだった。
小父さんは夕方になると、どこからか帰ってきて酒と食べ物を持って、よく俺の家に来ていた。
「で……俺が13歳のときにさ、その家に、一つ年上の千鶴っていう女の子と、その母親が現れたんだ」
そして千鶴と、綺麗な女の人と小父さんの3人でその家で暮らし始めた。
女の人の名前は芳恵さん。静かな人で俺達はすぐに仲良くなり、芳恵さんはしばらくすると小父さんの奥さんになった。
千鶴というその女の子は、可愛くて頭が良かった。
そういう女性を後妻といい、千鶴はその人の連れ子というのだと知った。
ある日、千鶴達、親子3人が、頼みがあると言って俺の家に来た。
大阪で骨董の商売をすることになったのだという。
小父さんの田村家は昔からの大きな質屋だった。
だが入質する客がさっぱりこなくなったのでお兄さんから譲られたのだそうだ。
その小父さんは譲られてすぐに店を閉め、質屋を廃業していた。
蔵の中には昔からの高価な骨董品が流れて大量に残っているので、それを金曜日に大阪に運んで売り、月曜日に帰ってくるという、骨董屋を始めることにしたのだそうだ。
問題は千鶴のことだ。
学校があるので連れて行けない。
なので、毎週3晩だけ、用心のために千鶴を俺の家に泊めてくれないか。そういう話しだった。