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縛師-Ⅰ-告られてから『ごっこ』の終わりまで
第4章 お姫様ごっこ
「泊めることはかまわないどころか、うちも女の子ができたようでむしろ大歓迎だが、誰も居ないことが知れると却って空き巣に対する用心が悪くならないか」
それが父の意見だった。
「逆に、ウチのリョウを泊まりに行かせ、灯りを付けて屋敷内を賑やかにしたほうが、用心になると思うがどうだろう。もちろん千鶴ちゃんの食事や風呂はウチで準備するから」
父が、どうだ、と言うように俺を見た。
「大丈夫。俺、剣道の昇段試験に受かったから、空き巣をするような大人には負けない。ちづちゃんは俺が守る」
千鶴の「ふふっ。じゃあ守らせてあげる。そのかわり勉強見てあげるわ。セキュリティはウチの方がしっかりしてるし、ウチの方が気を遣わなくていいもの」というひと言で父の案が決まり、千鶴は俺を見て微笑んだ。
千鶴は不思議なオーラを持っていた。
いつだったかバラの棘で指を傷つけたことがあった。
「痛いだろ。手当てしに帰ろう」
そう言って声をかけたが動こうともせずに、笑みを浮かべて流れる血を見続けていた。
俺がムカデを庭で踏んだときも、クネクネと動きまわる断末魔のムカデをいつまでも見ていたかと思うと、尖った串を持ってきて頭に突き刺して笑う、そんな少女だった。
千鶴の親が商売で居なくなる日は、近所の子供達数人と、留守番の手伝いという名目で、屋敷を自由に遊べる基地みたいにしていた。
千鶴は小遣いを沢山貰っていたから、コンビニで菓子や飲み物から弁当まで買って、みんなに食べさせてくれた。
別にそんなことしなくても、俺達は来なくなったりしないと言ったのだが、こうすると、お父さんとお母さんが安心するから、といって譲らなかった。
集まる子供は、小6の俺。小5の男子が二人。小4の男子が二人。それがいつものメンバーだ。
初めの頃はトランプとかテレビゲームをしていた。千鶴は俺に勉強を教えてくれたりもしていたが、あるとき祭りでもないのに浴衣を着て現れた。
それから、千鶴の提案するお姫様ごっこが始まった。