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縛師-Ⅰ-告られてから『ごっこ』の終わりまで
第4章 お姫様ごっこ
「お姫様ごっこ……そんな遊びはしたことがなかったわ。どうするの」
『お姫様』のワードに、ワクワクした声でスズが訊く。
「最初のルールは新聞紙を丸めた剣で、全員が一斉にチャンバラごっこをするんだ。最後に勝ち残った者がお姫様の千鶴と結婚してお殿様になれる。お殿様は何でも命令出来る。部屋の掃除をしろ。とか、ゴミを棄ててまいれとか」
「へー、以外。結構まともな命令するんだ。チャンバラごっこなら、近所の子がプラスチックの剣で叩き合うやつやってたな」
「俺も剣道場で最初にやった練習はそれで、面白くて夢中になった」
千鶴の提案のチャンバラごっこはいつも俺が最後まで勝ち残ったから、それでみんなが文句を言いだした。
すると千鶴が次のルールを作った。俺ともう一人がお姫様を誘拐する悪者で、それを他の3人が助けに来るっていうストーリーだ。
助けに来るのは3人。悪者は5年の1人と俺のふたりだから、最初の頃はすぐに助けられた。
すると次はお姫様を縛って、その縄が解けるまでは助けた事にならないというルールになった。
『ほら。縛った縄が解けないように固く結ぶと、一人がほどくのに苦労している間に2対2でチャンバラができるじゃない』
千鶴の意見に皆納得し、次から俺は千鶴を縛った縄が解けないような縛り方に工夫を凝らした。
「へえ。なんか高度になってくね」
スズが感心する。
「縛り方は千鶴が教えてくれた。その家には大きな質蔵があってさ、中に荷造り用に、色々な長さに切り分けた古い縄がいっぱいあったんだ」
「千鶴は色々な縛り方を知っていた。 一番役に立ったのは両手を背中で縛ったあと、両足首を縛る。次に背中で縛った縄と足首を縛った縄を引き寄せて身体を反らせて結ぶ。逆エビ反りというのだけど、こうすると、反った身体を伸ばそうとする力がいつも結び目にかかるからほどけない」
「その解けない結び方を、縛られる千鶴さんが教えてくれたって事?」
「そう。しかもちづは助けがくると弓なりの身体を伸ばそうとした。そうすると結び目に力がかかるから益々解けなくなる」