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 縛師-Ⅰ-告られてから『ごっこ』の終わりまで
第4章  お姫様ごっこ
「まるで千鶴さんは縛られたかったみたいね……。それにどうしてそんなことを知っていたのかしら」

「蔵の中の物を売りに出すときの荷造りを手伝って覚えたと言っていた」

 でもそれだけではないことが、あとでわかった。

 蔵のタンスの引き出しにそういう本や写真がしまいこまれていて、千鶴はそれを見つけて見ていたのだ。

 あるとき、みんなが帰ったあとで、千鶴は「もっと色々な縛り方があるから、使えるものをさがして練習しようよ」と言い、「役に立つ写真があるの」と俺を蔵に連れて行った。

 千鶴が照明のスイッチを入れると蔵の隅々まで照らしだされ、天井クレーンまで設置されているのが見えた。

 階段の途中には、古い時代に戻ったように捕り物に使うサスマタや槍が何本も掛けられている。

 壁際には幾つものタンスや長持ちが並べられ、柱から柱に張られた一本の綱に、長さごとに分けられた縄が何十本とかけられている。
 ごっこの時、千鶴が持ってくる縄がこれだと気がついた。

 中央付近には体育マットが乗った卓球台ぐらいの大きさのテーブルがあり、その上で荷造りをするのだと千鶴が言った。
 
 千鶴は俺に、蔵の扉を閉めて鍵をかけるように言い、(蔵なのに内鍵がつけられていた)自分はタンスの引き出しから何十枚もの、女性が縛られた写真と本を取りだして、机の上に置いた。

古い本は拷問のための解説書のようなもので、縛り方、責め方、責めの限界までが詳細な絵と共に読めない筆文字で書かれていたし、アマリリスという表題の本には西洋の拷問具の紹介や使用例、小説と挿絵が描かれていた。
 
 写真は、古い白黒写真の、芸者の髪型をした女性が縛られ、股間に棒のようなものを入れられている画像から、昭和の終わり頃かと思えるカラー写真までが乱雑に積み重ねられていた。

 ドキドキした。

 ごっこではない。大人の女性の苦痛に歪んだ顔から、まるで悲鳴が聞こえるような気がして目が離せなくなった。
 
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