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貴女に溺れて彷徨う
第1章 眠り姫は魔法で目覚める
四六時中ときめいていられる女の肌は、体内に砕いた宝石を仕込んでいるくらいには、きっと明るく潤っている。
「女が綺麗になれるとっておきの裏技、知ってる?」
コスメ特有の香りが、みなぎに距離を詰めたあたしの鼻腔をくすぐった。
塗ったばかりのコーラルピンクのルージュが艶めく唇に、あたしは人差し指を置く。
そんなあたしに困惑した目を向けるのは、肌が白くてむっちりとした肉づきの小柄な女だ。
「裏技……。整形ですか?」
稲本みなぎは、神妙に、緊張した面持ちさえ見せて、今しがたの回答を捻出した。
あたしは、指に掬ったコーラルピンクを舌に拭う。油分を含んだ彼女の味が染み通る。
「身体に悪いですよ」
「女って、一生の内に、どのみち口紅三本は身体に入れるんだって」
ただ、あたしはみなぎから一生分のルージュを拭い取っても、満足出来ないだろう。
どうせ彼女を味わうなら、直接が良い。
「裏技って何ですか?」
特徴的な言葉つきを、あたしは封じた。
「んっ……?!」
夢にまで見た唇は、とろけそうに柔らかい。
不憫になるほど強張る肩から、嫌がっているのが分かる。きっとみなぎはあたしの行動の意味を理解しようと、また律儀に頭を悩ませている。他人を否定する術も得ないでいたせいで、拒みたいなら肩を少し押し返せば良いことも知らない。