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渇いた心に水を注ぐ
第11章 働き方改革〜圭人
「次は、ここだな」と床屋さんに入ると、
「そんな髪と髭では顧客がびっくりするからな。
口髭くらいだったらまあ、良いぞ」と言われたけど、
すっぱりやって貰うことにした。


「なんだか…若返りましたね?」と真由子ちゃんに言われて、
照れ臭くて顎に手をやると髭がないから変な感じだった。


テーラーに戻ると、
持ち帰れるスーツを着てみる。
真由子ちゃんがいくつかネクタイを選んで、その中の一本を結んでくれると、なんだか俺は別人のようだった。


「うん。
これなら私の事務所で雇ってやれるな?
来週から来れるのか?」


「いや、引き継ぎがあるから、
1週間、待って貰えますか?」


「判った。
それで、真由子さんのご両親に挨拶はしたのか?」


「いや。まだです」


「きちんと挨拶してきなさい。
ご両親としたら、ご心配されるよ?
その格好なら、
ギリギリ及第だろう?」と笑う。


真由子ちゃんと顔を合わせて、
なんか照れ臭くて笑ってしまう。


「付き添いが必要なら、
私が一緒に行くよ?
まあ、良い大人だから、
大丈夫かな?」と笑った。


時計を見るともう8時を回っていた。

なんて長い1日だろうと思った。



叔父さんに頭を下げて、
タクシーを停める。
そして叔父さんを車に乗せて別れると、
かなりヘトヘトになっていた。


「ご両親に挨拶…明日、行こうか?」と言うと、
「電話してみますね?」と真由子ちゃんが言った。

少し静かな処を探して、
路地の片隅で電話をするのを待った。


せっかくだから、その辺りで夕食でもと言って、
近くの寿司屋に入った。
接待で使うような有名店は、
金曜の夜で混んでいたけど、
なんとかカウンターに座れた。

俺は冷酒をチビリチビリと飲みながら、
美味しそうに寿司を摘む真由子ちゃんの横顔を眺めて、
ホワンと酔ってしまう。



翌日の土曜日に、
真由子ちゃんの実家に行くことになって、
かなり緊張しながら真由子ちゃんのマンションに帰った。
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