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渇いた心に水を注ぐ
第16章 狂気から静寂へ〜賢人
「いや、簡単に言うけど、
相手なんて、そんなに簡単には…」


「そんなこと、ないですよ?
ある日、突然出会えると思います。
その時に、ちゃんとお付き合い出来るようにしておけば良いんですよ」と真由子さんはきっぱりと言った。


「お兄様、独身でしょ?
子供が居る訳でもないし、
手に職もある。
あとは、どんなお相手が良いのかなって、
考えてみたらどうですか?
打算的で利害関係がって考えると、
また、同じような方を引き寄せてしまうかもしれないから、
純粋に好きだって思い合えるような方にするとか?」


「そんな相手、
居るのかな?」


「何処かに必ず居ますよ。
外見に惹かれるのかもしれないし、
話し方とか、声に惹かれるのかもしれないし、
どこがっていうのは判らないけど、
とにかく、何故だか惹かれてしまう方、
絶対に居て、
出会えると思いますよ」


「僕は…
真由子さんみたいな人が良いな。
圭人より先に出会いたかったよ」


「あら。
出会ってたんですよね?
私が学生の頃に…。
でも、その時は、上手く糸が繋がらなかったんですから、
ご縁がなかったのかも」


確かにそうだ。
圭人よりもずっと早くに、
僕は真由子さんと会っていた。

それなのに、
ナンパしたらすぐにホテルに来るような女の子と寝てたんだからな。




「明日から病院に復帰する。
傷痕が少しでも残らないように診たいから、
明日以降、病院の方に来てください。
それと、本当に申し訳ないことをしました。
許してくださいと言える立場ではないけど…」


「お兄様、明日、病院に伺いますので、
宜しくお願い致します」


「えっ?」


「圭人さんもそれで良いですよね?」


「えっ?
真由子ちゃん、それで良いの?」


「私…一人っ子だから、
兄弟が出来て嬉しいですよ?
だから、圭人さんも、お兄様と仲良くしてくださいね?」
と真由子さんはゆったりとした口調で優しく微笑みながら言った。





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