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渇いた心に水を注ぐ
第3章 セカンドコンタクト〜圭人
「あっ…次の予約はどうする?」と訊くと、
「明後日は…?」と言う。

「パソコンないから、判らないな。
電話しても良い?」

「はい…」

「じゃあ、今夜は遅いから、
明日の夕方、早い時間に電話するね?
おやすみ」と言って手を振った。


彼女も、「おやすみなさい」と言って頭を下げると、
エントランスへと消えていった。




やばい。
なんか、恋してしまいそうだ。


俺は後ろ姿を見ながらそう思った。


予約の為の電話だって、
電話する口実だ。
土日は余程のことがないとサロンの仕事は入れてないし、
局の仕事も入れてない。
単発の映画やドラマの仕事も入ってないのは判ってた。



でも、今度は慎重にするつもりだから、
少しずつ進めようとも思った。

まだ、お互いのことを知らなすぎる。



梨香子との時は、
本当に流れに任せるように話が進んでいった。


大学出て、
叔父の事務所で税理士や会計士の仕事しながら、
母親のエステチェーンの美容室でヘアメイクの仕事を遊び半分で始めてた時に、
梨香子と出会った。


ボーイッシュなイメージで、
体型も少年みたいな梨香子は、
他のオンナをアピールしてくるようなスタッフより話しやすかった。

アメリカ人の祖母に似たルックス。
サロンではオーナーの次男。
父親は医者。

学生時代も母親のサロンでも、
女の子が群がってくるのが、
正直、面倒だった。

っていうか、
外見と家の財産とか親の仕事とかで打算的に近付かれるのがうんざりだった。

ちゃんと俺のことを見て欲しい。
ちょっとガキっぽい感傷じみた感情もあった。

医者になって父親と同じ道を進んでた兄貴への劣等感もあった。
そんな兄貴は、
母親のエステサロンの花形エスティシャンの絵美さんと結婚間近だった。

絵美さんは大手化粧品会社のひとつの創業者一族の娘だか姪とか言ってた。
派手な顔立ちの絵美さんは、
正直苦手なタイプだった。


梨香子はその点、
結構俺に塩対応で、そんな処が気持ち的に楽でもあり、
良かったんだと思う。

ただ、それも計算されてたってことは、
後から知ったけど。

絵美さんと高校まで同級生だったと聞いて、
意外な感じもした。

俺の結婚も、
裏で兄貴と絵美さんが糸を引いてたのも、
全く知らなかった。

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