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渇いた心に水を注ぐ
第5章 修羅場は突然に〜圭人
翌日、離婚届に署名捺印したものを持ってサロンに行って、
その場で梨香子にも署名捺印して貰った。

流石に翔くんは青褪めた顔をしていたけど、
接客中なので特に言葉は交わさなかった。

梨香子には、
「ここ、そのまま使って良いけど、
店名とかは変えてね?
今の屋号は、そのまま、俺が使うから。
会社の登記とか役職も変更するよ?
ここの家屋の持ち主は俺だから、
家賃は払って貰うよ?
詳しくは書面で契約書渡すから」と言った。

「マンションも悪いけど、
出て行ってくれる?
1ヶ月あれば、引っ越し出来るよね?
その後、処分するから」


梨香子は唇を噛み締めたまま、
一言も言葉を発しない。


「別にアイツと再婚しようが、
ここの店、一緒にやろうが、
どうでも良いよ。
本当に俺、間抜け過ぎたよ。
こんな近くに浮気相手居たのに気がつかないなんてな。
いつからだったんだよ?」

「2年くらい…」

「アイツがここに来てすぐか。
何歳だったっけ?
干支とか同じくらいとか?
まあ、良いけど。
だから俺とはセックスしなかったってことか。
まあ、それで妊娠とかしたらややこしいから、
ちょうど良いのか。
実家とかにも連絡しないでくれ。
浮気されて離婚だなんて、
とても言えないから」

「貴方が私を放っておくから…」

「別に遊んでた訳でも、
浮気してた訳でもないよ?
お前と始めたこのサロンの為にって、
必死に貰った仕事をこなしてただけだよ。
ヘトヘトで帰宅して、
お前が何も家事とかしてなくても、
俺、文句言ったこと無かったよね?
お前も仕事で疲れてると思ったから。
でも、話もしたいし、
キスやセックスもしたいからって、
何度も誘っても、
全然応えてくれなかったのは…。
他にオトコが居たからだったんだな。
アイツが初めてだった?
他にもオトコが居たのか?
まあ、良いや。
もう終わったから」

俺はそう言うと店を出た。


後ろから、小さい声で名前を呼ばれて振り返ると、
ヘッドスパ担当の彩が涙を流しながら追い掛けてきてくれてた。


「圭人さん、辞めちゃうんですか?」

俺は笑って、
「うん。サロンも辞めたし、
結婚も解消したよ」と言って、バイクに乗った。
彩はいつまでも見送ってくれてた。

その店に行ったのもそれが最後だった。
その足で区役所に離婚届を提出して受理されてバツイチになった。

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