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渇いた心に水を注ぐ
第5章 修羅場は突然に〜圭人
店内に入って近くのスタッフさんに、
「3連リング、見せてください」と言うと、
案内してくれる。

色々な太さのものや、
素材違いのもの、
ダイヤとかが嵌め込まれているものと、
思いの外、種類があった。

真由子ちゃんは、
一番華奢なものを手に取ってみるけど、
俺はもう一回り太いヤツの方が、
小さいけど少しふっくらした白い手に似合うと思って、
それを勧めた。


「圭人さんは?」と訊かれて、
俺も嵌めさせて貰って、
もう一回り太いヤツが大きくて日焼けした俺の手に似合っていると言われた。


真由子ちゃんのを包んで貰って会計しようとしたら、
真由子ちゃんがフランス人ぽいスタッフにフランス語で何やら話し掛けていた。


すげえな。
普通に喋ってるよ。
俺、第二外国語、ドイツ語だったから、
全く何を喋ってるか判らないけど…と思っていた。


店を出る時に、
真由子ちゃんはそのフランス人スタッフから、
何かを渡されていたようだった。

あまり気にせず、
俺の店に戻って、
約束のシャンプーをして髪を乾かしてあげる。

代金を払おうとするから、
「もう、貰わないよ?
好きな女の子のシャンプーするとか、
最高に嬉しいから、
これ、仕事じゃない」と言った。


「ほら、俺、この椅子で普段寝ててさ、
こっちの狭いシャワールームで身体洗ってるんだよね。
飯はお湯沸かしてカップ麺とか、
コーヒー淹れてパンかな?」と言うと、
「それじゃあ、温泉とか、
行きたくなる訳ですね?」と笑った。


「あのさ、
指輪を渡す儀式したいんだけど、
ここじゃ嫌だよね?
何処か、景色の良いレストランとかに行こうか?」


「あの…。
温泉ドライブのお礼に、
私の家でお夕食、如何ですか?
干物焼くだけだけど…。
そこで儀式は?」と思いがけないことを言われる。


「うわ。
ホントに?
家に招待してくれるの?
嬉しいな」

多分、俺、
メッチャ顔がニヤけてたと思う。



それで、干物や指輪の袋を持って、
のんびり歩いて真由子ちゃんの部屋に向かった。


駅を回って、
花屋でピンク色の薔薇の花をありったけ買った。

真由子ちゃんは、真紅の薔薇というより、
淡いピンクの薔薇が似合うと思ったからだ。
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