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渇いた心に水を注ぐ
第8章 歪んだ愛情〜英一
「随分と華やかな参列者でしたね?」と言うと、
「自分だけちょっと異質でしたでしょう?」と苦笑する。

「他の女の子達は殆どが高校までの同級生だったみたいで、
私だけ大学の同級生で初対面だったんです」と言った。

「どうして呼ばれたのかしら?
ピアノ弾けるからかなって」と笑う。

「音大…ではなかったですよね?」と訊くと、

「いいえ、違います」と言う。

「でも、素敵な演奏でしたね?」と言うと、
恥ずかしそうな、はにかんだ笑顔を浮かべる。

猫舌みたいで、
紅茶にたっぷりミルクを入れて、
ゆっくり冷ましながら飲んでる様子が、
仔猫みたいだなと思った。


「名刺、ないって言ってたけど、
名前だけ訊いても良いかな?」

「あら。
失礼致しました。
中川真由子と申します。
斎藤…先生とお呼びすれば良いですか?」と名刺を見ながら言うので、
「患者さんじゃない人に先生って呼ばれるのは…
名前で呼んでください」
と言うと、

「斎藤さん…」と呼ばれる。


「あの…良かったら、また会いたいな。
ここに電話して?
食事に行きましょう」

「あの…でも、私…」

「学校、忙しいですか?
土日は休みじゃないのかな?」

「日曜日の朝は教会に行くので…」

「じゃあ、土曜日は?」


正直、自分からこんなに積極的に女の子を誘ったりしたことはなかったけど、
真由子さんのことを手に入れたい。

そう強く思ってしまった。



「遅くなるといけないから、
送りますよ?
家はどっち方面?
ふーん。
だったら近いかな?」と言って、
少し強引にタクシーに乗り込んだ。


勿論、タクシーの中で手を握ったり、キスしたりなんてことはしない。

なんていうか、
これまで周りに居たオンナとは全く違う感じがしたから。



タクシーで彼女の家の前まで送って、
「電話してね?」と言ったけど、
果たして来るのかな?と考えて、
翌日、結婚式に出てたヤツらに電話でリサーチした。

どいつも結構、尻軽女を持ち帰ってたようで、
まだホテルに居るっていうヤツも居た。


彼女のことを知ってるコも本当に居なくて、
これは新郎通じて新婦に連絡先とかを訊こうと思った。



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