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渇いた心に水を注ぐ
第2章 ファーストコンタクト〜真由子
「ありがとうございました」と言って立ち上がろうとしたら、
引き留められる。
「えっ?まだだよ?
ここまでは、ヘアードネーション用のカット。
ほら、凄く綺麗に出来たでしょ?」と言って、
束になった私の髪をトレイに載せて見せてくれる。
「でさ、そのままじゃあんまりだから、
ここからが俺の腕の見せ所なわけ。
もうちょっと座ってて?」
真剣な顔で私の髪を見ながら、
軽いハサミ捌きでカットしていく。
鏡越しにも確認していく。
あっという間に幼稚園児からお洒落なショートボブになる。
「良いね。
顔立ち、美人だけど可愛さもあるから、
ショートボブ、凄く似合うよ」と、
横や後ろも合わせ鏡で見せてくれる。
白い首筋が出ているのがなんだか恥ずかしい。
クラシカルな大きなブラシで一度毛を払ってからガウンをそっと脱がせてくれる。
「えっと、写真撮っても良い?
あ、外に出したり、見せたり、
勝手に広告に使ったりしないから。
カットの記録として撮ってるだけだから」
思わず頷くと、
嬉しそうにスマホを出して正面、斜め、後ろと撮っていく。
「笑って?」と言われたけど、
とても笑えなくて、
「ごめんなさい」と言ったら、
「良いよ。
ごめん。
無理して笑わなくて良いよ。
モデルや女優じゃないんだから、
笑いたくもないのに笑えないか」
「あの…
ありがとうございました」と小さい声で言うと、
「ほら。
その笑顔、可愛いな」と言われて、
下を向いてしまう。
「これ。
店の名刺じゃなくて、
個人の名刺。
携帯入れてるから、
また、髪を切りたくなったら電話して?
ここ、留守だったり、
そこのシャンプー台で寝てることも多いから、
しつこく電話してみて?」と笑う。
「でさ、名前、教えて?
カルテに書いておくから」
「あの…中川真由子です。
あ、名刺…」
「良いよ。
名刺なんて要らない。漢字だけ教えて?
ふーん。
これであってる?」
と言ってカルテの一番上に書いた字は、
思ったより綺麗で驚いた。
「えっと…シャンプーだけってお願い出来るんですか?」
「シャンプーブロー?
勿論。
いつ、来る?」
「明後日とか?」
「時間は?」
「5時半くらい…」
「えっ?朝の?」
「違います。夕方で…」
「良いですよ。
夜、デートなのかな?
お待ちしてます」
引き留められる。
「えっ?まだだよ?
ここまでは、ヘアードネーション用のカット。
ほら、凄く綺麗に出来たでしょ?」と言って、
束になった私の髪をトレイに載せて見せてくれる。
「でさ、そのままじゃあんまりだから、
ここからが俺の腕の見せ所なわけ。
もうちょっと座ってて?」
真剣な顔で私の髪を見ながら、
軽いハサミ捌きでカットしていく。
鏡越しにも確認していく。
あっという間に幼稚園児からお洒落なショートボブになる。
「良いね。
顔立ち、美人だけど可愛さもあるから、
ショートボブ、凄く似合うよ」と、
横や後ろも合わせ鏡で見せてくれる。
白い首筋が出ているのがなんだか恥ずかしい。
クラシカルな大きなブラシで一度毛を払ってからガウンをそっと脱がせてくれる。
「えっと、写真撮っても良い?
あ、外に出したり、見せたり、
勝手に広告に使ったりしないから。
カットの記録として撮ってるだけだから」
思わず頷くと、
嬉しそうにスマホを出して正面、斜め、後ろと撮っていく。
「笑って?」と言われたけど、
とても笑えなくて、
「ごめんなさい」と言ったら、
「良いよ。
ごめん。
無理して笑わなくて良いよ。
モデルや女優じゃないんだから、
笑いたくもないのに笑えないか」
「あの…
ありがとうございました」と小さい声で言うと、
「ほら。
その笑顔、可愛いな」と言われて、
下を向いてしまう。
「これ。
店の名刺じゃなくて、
個人の名刺。
携帯入れてるから、
また、髪を切りたくなったら電話して?
ここ、留守だったり、
そこのシャンプー台で寝てることも多いから、
しつこく電話してみて?」と笑う。
「でさ、名前、教えて?
カルテに書いておくから」
「あの…中川真由子です。
あ、名刺…」
「良いよ。
名刺なんて要らない。漢字だけ教えて?
ふーん。
これであってる?」
と言ってカルテの一番上に書いた字は、
思ったより綺麗で驚いた。
「えっと…シャンプーだけってお願い出来るんですか?」
「シャンプーブロー?
勿論。
いつ、来る?」
「明後日とか?」
「時間は?」
「5時半くらい…」
「えっ?朝の?」
「違います。夕方で…」
「良いですよ。
夜、デートなのかな?
お待ちしてます」