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第4章 調教

中は思いの外広かった。

私が想像していた部屋の２倍、いや３倍の広さがあった。

「今、コーヒーを煎れますからそこに座っていて下さい」

常務が私にリビングのソファに座るよう言い、自分はキッチンにコーヒーを煎れに行った。

「あの、すぐ帰りますから、お構いなく・・」

私はキッチンの常務に声をかけた。

常務はそんな言葉など耳に入らないといった様子でコーヒーの準備にかかっていた。

仕方なく私は部屋を見回していた。

２０畳はあろうかというリビングと周りに幾つかの部屋があるようだった。

買えば一億近い部屋だと推測した。

「お待たせしました」

常務が２人分のコーヒーカップを運んできた。

「さあ、どうぞ。我が家のコーヒーは美味しいですよ」

常務が私の前にコーヒーの入ったカップを置きながら言った。

「夫からこれをお届けするようにと・・」

長居したくなかった私は、さっそく書類を常務に差し出した。

それを受け取った常務は興味なさそうにそれを後ろに放り投げたのだった。

私は唖然とした。

夫から、至急届けるようにと頼まれて取るものもとりあえず、わざわざ届けに来たのに・・

「常務さん・・それって急ぎの大切な書類なのでは・・？」

「アハハ、こんなものはどうでもいいんだよ！これは奥さんを呼び寄せる為の口実に過ぎないんだから・・」

常務はコーヒーを一口飲むとニヤリと意味ありげに笑うのだった。

「・・？」

あまりの事に言葉がなかった。

（私をマンションに呼び寄せる口実・・？）

信じられなかった。

夫を利用して私を呼び寄せるとは・・


「常務・・！どういう事ですか？」

私は怒りに唇を震わせながら問いただした。

「アハハ、だから言ったでしょ？奥さんを呼び寄せる為に新崎君を利用したんですよ！」

常務は悪怯れた樣子もなく言い放ったのだ。

「わ。私をここへ呼び出す為に夫を・・？」

私はソファから腰を上げた。

そして帰ろうとして踵を返した瞬間、常務に腕を掴まれたのだった。

「おっと、せっかく２人切りになれたのに・・帰るだなんてツレないですね」

常務が不敵な笑いを浮かべた。