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寝取られ妻
第6章 完落ち
矢野には失望、いや絶望した。

まさかあんな男だったとは・・

矢野の人間性を見抜けなかった自分に腹がたった。

でも、妊娠したのは矢野一人の責任ではないのだ。

排卵日に矢野に抱かれに行った自分が悪いのだ。

何と浅はかさで馬鹿な女なのだろう・・

久美子は真面目に自殺も考えたのだった。

でも、幸か不幸か、久美子のお腹には新しい命が・・

(せっかく授かった大切な命。この子の為にも死んではいけない・・)

そう思うようになった。

翌日、久美子は産婦人科の門を潜ったのだった。

診察の結果、妊娠は事実だった。

子どもの血液型はA型との事。

久美子はふと思い付いたのだった。

(私の血液型はB型、祐ちゃんはAB型。2人の子どもはAかBかAB型。そして・・矢野は私と同じB型だった筈。そうすると生まれてくる子どもはBかO!)

久美子に一条の明るい光が差してきた。

(この子は矢野の子どもじゃない!この子は祐ちゃんの子どもなんだ!)

一刻も早く祐介にこの事実を伝えたかった。

久美子がマンションに帰ると、祐介の靴があった。

(祐ちゃんが帰ってきてくれた!?)

久美子は喜び勇んで部屋に上がった。

リビングで祐介がテレビを観ていた。

「祐ちゃん、お帰り・・」

久美子は祐介の隣に座りながら、明るく声をかけた。

すると祐介が何やら1枚の紙を差し出したのだ。

手に取ってみてみると、それは『離婚届』だった。

「・・」

やっぱり・・

久美子は覚悟はしていた。

「祐ちゃん、ごめんね・・」

久美子は目に涙を浮かべて、祐介に詫びるのだった。

「おまえのあんな姿を見せられて、何もなかったような顔で暮らしていける筈がないよ」

祐介が言う事は最もだった。

「そう・・だよね・・。男に騙されて、いいように弄ばれた女なんて・・救いようがないよね・・」

久美子は自嘲的にそう言った。

「わかったら、そこに署名捺印して役所に出してくれ。俺の両親には話してあるから・・」

祐介は久美子を見ようともせず、事務的な口調だった。

「うん・・わかった。本当にごめんね・・そして今までありがとう!」

久美子は深々と頭を下げた。

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