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駆け込んだのはラブホテル
第14章 朝



 守屋が明らかに動揺したのが可笑しかったのか、桜木がくすくすと笑った。
守屋も過剰反応してしまったことを自覚して、恥ずかしくなる。



「……おはようございます」

 守屋が改めて挨拶を言い直すと、桜木は、

「今何時ですか」

と尋ねた。



「六時半、です」

「えー、早起きじゃん」

 桜木はやけにご機嫌に見えた。



「引っ越すんですか?」

 桜木はもう一度同じことを聞きながら、守屋のスマホに表示されていた物件情報を覗き込む。

「ええ、というか、一人暮らし始めようかなと思いまして」

「守屋さん、実家住みでしたね」

「はい」



 ああ、敬語に戻ってしまっているな、と守屋は意識的に口調を崩す。

「実家だと、桜木さん呼べないからね」

「……そうですか?」



 いや、今の言いかたは語弊があった。

「親に紹介するのは吝かではない。けど」

 守屋はスマホを置いて、もう一度ベッドに体を沈めた。



「こういうことはできないでしょ」


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