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第14章 朝

　返ってきたのは、長距離を走った後のような息切れだった。

守屋は体を起こして、桜木の顔を見た。
くしゃくしゃに寄せられた掛け布団の向こうで真っ赤な顔をした桜木と、目が合った。



「みっ……見ないって言ったのに！」

「あっごめん」



　守屋は慌てて目を閉じる。
しまった、どうせ怒られるなら、彼女が必死に隠そうとする部分も見ておけばよかった、などとよくないことを考える。



「……ばか」

　彼女の声は小さかった。
桜木の足元に膝まづく守屋の膝に、掛け布団が当たる感触がして、桜木が掛け布団の中に戻っていっているのを察した。



「……もう、目、開けていいですよ」

　桜木の声は相変わらず小さくて、守屋が恐る恐る目を開けると、桜木の体はすっぽりと布団の中に納まっていた。

　顔すらも掛け布団の中だった。



　その態度に――守屋はじわじわと不安を覚え始める。



「……すみません、無理やり、でしたよね、今のは」

「……いえ」

「やっぱり……嫌でしたか」