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駆け込んだのはラブホテル
第15章 入浴剤



 守屋は彼女の首筋に、痕が付かない程度のキスをいくつか落とし、これ以上下にキスしたかったら後でだな、と顔を上げた。



「俺も誰かに言おうかな」

 守屋は社内で桜木のことを誰にも話していなかった。

「お好きにしてくださいな」



 桜木が守屋を振り返る。

「誰かに言うんですか」

「うーん、どうだろう。俺、今まで社内で恋愛の話ぜんぜんしてこなかったから」

「どうして?」



 そういう――プライベートと仕事では一線を引くとか、仕事の関係はあくまで仕事の関係とか、そういうタイプだとは、桜木は守屋を認識していなかった。
普通に同僚とお昼を食べていたり、帰り一緒に飲んで帰るところを何度も見ていたし、桜木とも、プライベートな情報を隠そうとする素振りはなかった。

不思議に思って聞くと、守屋はちょっと口をへの字に曲げて、



「……童貞がバレるので」



 短く答えた。

「……なるほど」



 笑ってしまった桜木を軽く睨み、とはいえ、と守屋は話を戻した。

「同僚ぐらいからふんわり話が伝わるほうがいいんだよねぇ」

「話が伝わる?」

「だって、いつどんなタイミングで、どんな顔で部長に報告したらいいんですか」



 すると、桜木はびっくりしたように目を丸くした。


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