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駆け込んだのはラブホテル
第4章 「水着よりは守備範囲広いです」
「見ました?」
その沈黙を破ったのは、ガラス越しの桜木のくぐもった声だった。
「あの、えっと」
言い訳をできるほど頭は回っていなかった。
手を差し入れるという行動自体が、一度ドアを開け、ドアを開けてはまずいと認識したということを、はっきりと物語っていた。
「えっと」
何も言えずに「えっと」だけ繰り返す守屋に、きぃ、と何かが軋む音が聞こえた。
しばらくして、守屋の背中が押された。ドアが、内側から押し開けられていることがわかって、守屋はそっと体をドアの前からどかし、中を覗いた。
白いバスタオルを胸から下に巻いた桜木が立っていた。
髪は濡れていた。
タオルの合わせ目を持つ守屋の手も、しっとりと濡れていた。
手が抑える胸元は柔らかく沈み、そして胸の膨らみに引き上げられたせいか、タオルの丈はぎりぎりだった。
あと数センチタオルの幅が短ければ見えていたんじゃないかというぐらい、滑らかな太ももが露になっている。
背中側より前部のほうがタオルの丈が短くなっていて、太ももの間から背中側のタオルの裾が覗くので、守屋はまるで下から覗いているかのような錯覚に陥った。
そしてそのタオルの下には。
恐らく、何も、履いていない――
守屋は慌てて目をぎゅっと瞑ったが、その光景はすでに瞼の裏に張り付いて離れなかった。
両こぶしを握り締めていないと、彼女のその手を払って、タオルを剥がしてしまうのではないかと思った。
無意識に手が伸びて、そのタオルの割れ目を暴き、見てはいけない部分を晒してしまうのではないかと思った。
「大丈夫ですよ、守屋さん。もう、見られてもいい格好してます」
「……それ、見られてもいい格好だと思ってるんですか」