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駆け込んだのはラブホテル
第5章 普通に、普通に……



 彼女が髪を乾かし終えるのと、食事がようやく運ばれてくるのが同時だった。

 二人でまたソファに並んで食事を摂る間は、何でもない、普通の話をした。
業務の話にならない程度の同僚たちの話とか、お互いの普段の生活とか、家族とか。
案外話に花が咲いて、桜木は、守屋が焼きそばを食べるのに合わせて小さいサラダをゆっくり食べていた。



「じゃあ、僕はそろそろ風呂に入りますので、桜木さんは先に寝ていてください」

「すみません」

 時刻は三時を回っていた。流石に桜木も眠そうにしていた。

 守屋もいい加減寝たかったが、桜木が歯磨きをするには洗面所に入らないといけないので、歯磨きをしている間、待つことになる。

「すみません、今のうちに、少しだけ明日の話をさせていただきます」

「お気遣い、ありあとうございましゅ」

 歯磨きをしながら、桜木が言う。

「明日の予定は、一社だけです。顧客訪問ですが、長い付き合いのところなので、そんなに気張らなくても大丈夫かと」

 歯磨きをしながら背筋を伸ばした桜木に、守屋が、気負わせてしまったかなと言葉を足す。

「昨日の打ち合わせどおりに……今までの桜木さんでいけば、大丈夫です」

 桜木は頷いて、少し肩の力を緩めた。

「相手先は新宿駅近くですので、ここから歩いて二十分ほど。このホテルは十二時までいられるみたいなので、こんな時間にもなってしまいましたし、ぎりぎりまで寝て、十二時にチェックアウトして、駅の近くで朝ごはんを食べましょう」

「もうお昼ごはんの時間ですけどね」

 本当は、明日の午前があく予定だったので、もう少し新宿駅周りで見て回りたいものがあったのだが、今から十時まで寝ても七時間。
疲れていることも考慮に含めれば、妥当な計算だ。


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