この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
駆け込んだのはラブホテル
第6章 寝顔に我慢できなくて
髪で陰になった桜木の首筋、弱く曲げられた指、閉じた目蓋と長い睫毛、滑らかな頬。
桜木の寝顔を、眺めることができる日が来るなんて、思っていなかった。
幸せだな、と呟きかけて、何をまるで、付き合っているかのような勘違いをと自嘲する。
「……別に、寝顔を見る権利を手に入れたわけじゃないんだよな……」
そのとき、桜木がもぞもぞと動いて、ちょっと上を向いた。
第一ボタンを外した寝巻きから、ほんの少しだけ、谷間が覗いているような気がして、守屋の心臓は急に早鐘を打ち始めた。
見てはいけない――いや――確かめなければ。
あれは、きっと光の加減でそう見えるだけで、自分は何も見ていなくて、だから自分は潔白であるということを、証明するために、もっと近くでよく見なければ。
ただ、もっと近くで見たいだけの言い訳なのは、自分でもわかっていた。
守屋は、ベッドの上に片膝をついた。
桜木は、同じベッドに入るところまでは、許していたはずだ。
自分は何も悪いことはしていない。
守屋は自分にそう言い聞かせる。