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駆け込んだのはラブホテル
第1章 大雨とダブルブッキング
迷う素振りを見せながらも、桜木の背中には、ありありと疲れの色が滲んでいた。
守屋にとっては何度目かの手慣れた東京出張でも、社会人二年目の桜木にとっては、これがはじめての出張だった。
初日の業務をそつなく遂行し、空いた時間で都会の空気にも触れ、よい旅になるはずだった。
意気揚々とホテルに向かえばまさかのダブルブッキング。守屋が、男性である自分と女性である桜木に隣どうしのシングルの部屋を予約しておいたのだが、どちらの部屋もすでに他の客が入っていると言われてしまった。
それが、五時間前、夜七時、新宿のビジネスホテルのロビーでの話。
当該ホテルはすでに満室。
平謝りしたフロントマンが近隣のホテルを当たってくれたものの、繁忙期の東京とは恐ろしい、空いている部屋は一室も見つからなかった。