この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
駆け込んだのはラブホテル
第7章 気まずい朝
桜木は、昨夜のことに何も触れてこなかった。
守屋は、桜木が本当に寝ていたのだと思いたくなる。
いや、彼女は確かに起きていた――いや、起きていたか寝ていたかなど関係ない。
寝ていたならなお、やってはいけないことをしたのだ。
それぐらいの分別はある、と、守屋はとうとう切り出した。
「……すみませんでした」
「え?」
洗面所で、ドアを開け放したまま髪を結んでいた桜木が振り返る。
声が小さすぎて聞こえなかったようだ。
大きな声では非常に言いにくいことだが、仕方がない。
謝らないという選択肢はない。
「昨夜は、すみませんでした」
桜木は、手を止めたまま、目を泳がせた。
「何のことですか」
「昨夜、あの……起きてましたよね」
桜木が顔を伏せて向こうを向く。
しかし、鏡に映った顔が真っ赤なのは、守屋から見えてしまっていた。
桜木は小さな声で、
「いいえ、寝てました」
と答えた。
桜木は、再び髪を結び始めた。
守屋は、その場でじっとしていた。