この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
駆け込んだのはラブホテル
第1章 大雨とダブルブッキング
「一部屋しかないみたいですね……」
桜木が申し訳なさそうに守屋を振り返った。守屋は、慌てて桜木の華奢な背中から視線を外した。
「そうですか、じゃあ、桜木さんはそこで寝てください。僕はもう少し探します」
そう言うと、桜木は驚いたように目を丸くした。
「でも、もう散々探したじゃないですか。ありませんよ、このあたりには」
「だったら、適当にネカフェでも見つけます」
「そんな……」
「大丈夫、僕はネカフェ慣れてるんで」
「でも」
バッグと傘を持ち直した守屋の、バッグの隅を掴んで桜木が引き留めた。
「申し訳ないですよ、ここは先輩の守屋さんが」
「女性をひとりで難民にするわけにはいきませんから」
「女性をひとりでラブホテルに置いていくのはいいんですか」
言われて、返答に詰まる。