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駆け込んだのはラブホテル
第10章 心変わり
「だから」
黙ったままの桜木に構わず、守屋は続けた。
「僕と、ちゃんとデートしていただけませんか」
守屋は、自分の頬が熱くなっていることを察していた。
人生ではじめての告白だった。
桜木からの返事はなかった。
沈黙に耐え切れなくなって、守屋は振り返って桜木を見た。
桜木は、目を見開いて、口を半開きにして、守屋をじっと見ていた。
何も言わない桜木に、畳み掛けるように言う。
「僕は桜木さんのことを何も知らなかった。昨日と今日で、それを痛感しました。けど、だからと言って、桜木さんのことを好きだという気持ちは消えてはくれなかったんです。
だから、僕は桜木さんのことをもっと知りたい。桜木さんのことをもっと知って、僕のことも知ってもらって、ちゃんと、普通に、体を犠牲にしなくても僕はあなたのことを大切にしたいんだって、あなたに知ってもらって、もし僕のことを信じてもらえたら、そのときに」
セックスしたい、は、あまりに直截な気がした。守屋は暫し迷って、
「……そのときは、可能な限り優しくします」
桜木があまりにも黙ったままなので、もし返事がノーなら、人生で最初で最後の一度だけ、桜木を襲って終わらそうかと考えて、そして、そんなことをしても自分が嬉しくないなと思い直すまでには充分な時間が流れた。
「いつ、ですか」
桜木がぽつりと言った。
「何がですか」
「デート。いつですか」