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駆け込んだのはラブホテル
第11章 人生初デート



しかし、桜木はそんな守屋に気づかず、いとも簡単に答えた。

「今日は守屋さんが、ずっと私に合わせてくださっていたので、次は、守屋さんのペースでデートがしたいです」



 次。



「次がありますか」

「あっ、守屋さん嫌でした? 私と……もう……」

 言いながらどんどん尻すぼみになっていく桜木の声に、蓋をするように守屋が言う。

「ぜひ。お願いします」

 桜木が明らかにほっとした顔をする。



「でも、僕も今日楽しかったですよ。桜木さんのペースで歩くの、すごく」

 桜木が楽しいかどうかだけをひたすらに考える時間は、疲れたけれど、とても幸せだった。

「優しい人ですね」



 優しさじゃないよな、と守屋は頭の中で一人考えたが、言葉にするほどのことでもないと思い、そのまま先を続けた。



「今日、僕、何も特別なことできませんでしたが」

「特別なことなんて、無理されても困ります。長続きしないですし。普通で居心地がいいのがいちばんです」

 そう言う桜木のほうが優しいと守屋は思った。

「じゃあ、また、どこか遊びに行ってください。僕でよければ」

「はい」

 桜木が微笑む。


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