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駆け込んだのはラブホテル
第11章 人生初デート
桜木の目が、だんだんと丸くなっていくのを見た。
「ちゃんと言ってませんでしたね。失礼しました。好きです」
「ふ、不意打ちやめてください」
「やめないよ」
ずっと我慢していた。
言いたかった、認めたかった、けれど仕事の関係だからと、桜木には迷惑だろうと押し殺してきた感情が、堰を切ったように溢れ出てくる。
「ずっと好きでした。いつも明るくて、疲れたところを表に出さないところとか、過去の嫌なことを引きずらないところとか、トラブってるときも落ち着いてて優しいところとか、ずっと、素敵だと思ってました。俺と付き合ってくれませんか」
守屋はそう言って、自分で言っておいて桜木の顔を直視できなくなって、赤くなった頬を手で隠しながら、顔を背ける。
「……『俺』、なんですね」
守屋の様子に、桜木も恥ずかしくなって視線を落とし、論点を逸らす。
しかし、守屋は、顔を背けながらも、話を逸らしはしなかった。
「今日一日、俺はすごい楽しかった。桜木さんのこと知れたとはまだまだ全然言えないし、桜木さんも俺のこと知れたとは言えないと思う。でも、俺はまたこうやって二人で出掛けたいし、桜木さんのことすごい好きだなあって思った。あと、桜木さんを他の男に取られたくない。だから付き合いたい――」
据わりが悪くて、結局末尾を、
「――です」
で締めた。
喉がからからでテーブルの上の水を一口飲んだけれど、焼け石に水だった。