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駆け込んだのはラブホテル
第13章 はじめての



 ようやくキスのしかたがわかってきた気がして、守屋に少し余裕が生まれる。

「桜木さんって、割とエロいですよね」



 守屋は桜木の細い鎖骨を、服の上から指でなぞってそう言った。

彼女の着ているサマーニットは、肌の露出こそ少ないものの、彼女の体のラインを強調している、ということに守屋はデートの途中で気がついた。
大きくはないが形のいい胸と薄いくびれのラインに、今日一日、守屋は視線を持っていかれないように必死だった。



「そ、そんなこと……」

「俺のことすごい煽ってくるし。今日もこんな服着てくるし」

「別に、普通の服じゃないですかっ」

「そう? わざとかと思いました。出張のときだって、誘ってきたの桜木さんからだったし」

「……私の横でひとりで勝手に始めたの、守屋さんじゃないですか」



 桜木が守屋をきっと睨む。その目は涙で潤んでいた。

「あ……あれは」

 そこを突かれると、痛い。

「……同じベッドで寝て平気だと思ってる桜木さんの、危機感が無さすぎだと思う」



 俺じゃなかったから襲われてる。もう二度とあんなことしないようにと、釘を刺しながら、どさくさに紛れて桜木の胸に顔を埋める守屋に、



「守屋さんじゃなかったら、まず同じ部屋に泊まるところでNGでしたよ」

 桜木が言った。

「だから、この歳まで、何もなかったんじゃない」



 ……守屋が心配することではなかったらしい。桜木は、守屋が思うよりちゃんと考えていた。



 でも、と桜木は言う。


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