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駆け込んだのはラブホテル
第13章 はじめての



 そこで、守屋の手が止まった。



「……守屋さん?」

 不安になった桜木が声を掛ける。



「すみません、ちょっと……いえ、大丈夫です」

 しかし、そう言いながら守屋の手は動かない。



「何ですか。私、変ですか」

「違う、そうじゃなくて」

 守屋がゆっくりと体を起こした。

「大丈夫です」



 そう言いながら、守屋は浅くなっていた呼吸を意識的に抑えつける。



「言ってください」



 桜木の、泣きそうな声が聞こえた。
桜木も身体を起こすのが、気配でわかった。

ベッドの上で二人は、とても近い距離で、並んで座っていた。

桜木は、自分の体はもしかして普通と違うのか、自分では守屋は満足できないのではないかと不安に駆られた。



「私じゃ、駄目ですか」

「違うんです」



 守屋は、桜木に誤解を与えてしまったことにようやく思い至る。
桜木が納得できる言い訳をしなければ、と思うと、嘘を考えている余裕はなかった。



「自分が……優しくできないかもしれないって思ってしまって」


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