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君と偽りのドライブに
第23章 2‐12:トーストの香り



 棚の上の置き時計は、九時を示していた。



「さっき起きたばっかって言ったけど、ほんとは?」

 卵を焼いている時間があるのだから、と思ってもう一度聞くと、

「……一時間前ぐらいです」

 哲弥は渋々といった様子で答えた。

 気ぃ遣わなくていいのに、と言おうとしたが、チン、とトースターが鳴ったので、今回は見逃してあげることにする。



 洗面所で顔を洗って出てくると、テーブルの上には目玉焼きに加えて、バターを塗ったトーストと、たった今お湯を注がれて湯気を立てるインスタントのコーンスープが揃っていた。



「ありがとう。おいしそう。いつもこんな朝ごはん食べてるの?」

「平日は食パン生で食ってる。休日は、気分によるけど、トーストとスープかな」

 卵を焼いてくれたのはサービスらしい。確かに、一人暮らしで朝からフライパンを洗うのは億劫だ。



「でも、ちゃんと食べててえらいな。今度からは胸張って、哲弥のお母さんに、毎日朝ごはん食べてるらしいですって言えるよ」

「……その節はご迷惑お掛けしました」



 哲弥が肩を縮めて頭を下げる。
スウェットで寝起きの見慣れない姿で、あまりにも哲弥らしい反応をするから、やっぱり嬉しくなってしまってくすくす笑った。


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