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君と偽りのドライブに
第9章 1‐8:知らない顔
「でももう寝るから。ごめんねびっくりさせて」
彼が突き放すように言って、私と距離を取るかのように座る位置をずらす。
もしかしたら、冷静を装ったつもりだったのかもしれない。
「有紗も部屋帰って」
「一緒に部屋で寝ようよ」
「……俺は」
哲弥はこちらを見ない。
「ここで寝る」
「どうして?」
彼は言葉に詰まって、視線を彷徨わせ、そして結局、中身のない台詞を吐いた。
「言わせるなよ」
私が聞きたいのは、そんな誤魔化しの文句じゃない。
「言ってよ」
「言えないだろ、こんな」
「言ってくれなきゃわかんないよ」
私は少し腰を浮かせて、彼のほうに寄った。
彼の体が強ばったことに少なからず傷ついた。
「……だって」
彼の口から次に出た言葉は、子どもの言い訳みたいに聞こえた。