この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
君と偽りのドライブに
第9章 1‐8:知らない顔
その先は、すぐには出てこなかった。
両手で顔を覆う。
「もう、勘弁してくれよ」
泣きそうな弱々しい声だった。
「訳わかんねえよ」
お酒の力なのか、いつもより彼は少しだけ饒舌で、少しだけ感情的だった。
「ばあちゃんは倒れるし、香澄ちゃんはあんなこと言うし」
ああ、この人は今、いっぱいいっぱいなんだ、きっと。
香澄ちゃんに何を言われたかは知らないけれど、哲弥にとって大切ないろいろなことが、同時に起きているんだろう。
「有紗は俺と同じ部屋で寝ても平気そうだし」
……彼のキャパを犯す要因の一つに、私もいるようだった。
「駄目なの? 同じ部屋で寝ちゃ」
そう訊くと、
「駄目」
即答だった。
それからの動きも、びっくりするぐらい早かった。