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君と偽りのドライブに
第9章 1‐8:知らない顔



 その先は、すぐには出てこなかった。



 両手で顔を覆う。

「もう、勘弁してくれよ」

 泣きそうな弱々しい声だった。

「訳わかんねえよ」



 お酒の力なのか、いつもより彼は少しだけ饒舌で、少しだけ感情的だった。

「ばあちゃんは倒れるし、香澄ちゃんはあんなこと言うし」



 ああ、この人は今、いっぱいいっぱいなんだ、きっと。

 香澄ちゃんに何を言われたかは知らないけれど、哲弥にとって大切ないろいろなことが、同時に起きているんだろう。



「有紗は俺と同じ部屋で寝ても平気そうだし」

 ……彼のキャパを犯す要因の一つに、私もいるようだった。



「駄目なの? 同じ部屋で寝ちゃ」

 そう訊くと、

「駄目」

 即答だった。

 それからの動きも、びっくりするぐらい早かった。


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