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君と偽りのドライブに
第12章 2‐1:デート
鞄は、ハイキング用と車の中に置きっぱなし用のふたつに分けた。
ハイキング用はできるだけ軽くしたくて、スマホとハンカチとリップのみの小さなサコッシュ。
車に置いておく用の大きめのトートには、明日の着替えやらお化粧ポーチやらが入っている。
明確に、今夜どうするという話はしなかったけれど、私も哲弥も明日は予定がないということは共有されていた。
彼がトートを一瞥して何も言わなかったので、うん、そういうことでいいんだろう、たぶん。
車の発進は相変わらず滑らかだった。
「お昼ごはん、どうするの?」
「一応、狙ってるとこがある」
受け答えしながらそつ無く運転をする彼の横顔を、かっこいいなと思っていることをもう否定しなくていいんだというのは、存外気が楽なものだった。
口元が勝手に緩むのは、流石に我ながらキモいので隠すけど。
しかし――「狙ってる」お店に着いたところで問題は起きた。
可愛らしい一軒家のカフェだった。こぢんまりとしていて、へぇ、いいお店知ってんじゃんと思うも束の間、駐車場の入口に差し掛かったところで彼の顔がさっと青ざめた。