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君と偽りのドライブに
第12章 2‐1:デート
身を乗り出して空きスペースを探しながら、彼はのろのろと駐車場内を徐行する。
今なら五歳児が飛び出してきても止まれるだろうという速さ。
結果、空きは見つからず、彼は駐車場の中途半端な通路でサイドブレーキを掛け、シートベルトを外した。
「ごめん、すぐ戻るからちょっとまってて」
車を出て店の入り口に走る彼の背中を見ながら、私が行けばよかったと思った。
運転席不在でこんなど真ん中に車があって、誰かが駐車場から出ようとしたら邪魔になってしまう。
しかし幸いなことに、そんなことになる前に彼は戻ってきた。
「かなり待つみたい」
「かなりってどれくらい?」
「はっきりは言われなかったけど……満席プラス三組待ってた」
見た感じそんなに大きな店でもない。運が悪ければ二時間ぐらいは待つかもしれない。
「私は待ってもいいけど。また今度にしてもいい」
運転席に座り直した彼は、ハンドルに寄りかかって項垂れている。
「気にしないでよ。満席でお店変えたことなんて、今までも何度もあったじゃん」
月一で仕事帰りにごはんを食べてたら、そりゃそういうこともある。
以前入れなかったお店に、別の日にリベンジして入れたこともあった。