この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
君と偽りのドライブに
第16章 2‐5:蛍光灯のついた部屋
そんな私の気も知らず哲弥は、
「それとも、今まで一度も、電気つけてシたことない?」
「そ、そんなことはないけど……」
私は一瞬答えに詰まる。
「そういう話、聞きたくないんじゃないの?」
「別に。有紗の恋愛事情はそこそこ知ってるし」
哲弥が顔を上げながら、平坦な口調で言った。
まあ、彼氏ができるたび私は哲弥に報告していたし、相談をすることもあった。
そんなとき哲弥がどんな顔をしていたのかは、もう思い出せない。
哲弥が話を戻した。
「電気、消さなくていい?」
「う……それは……」
「……他の男には見せるのに?」
哲弥の声のトーンが一瞬下がった。
そんな言い方しないでよ、と拗ねようと思ったけれど、哲弥がわざと意地悪な言い方をしたのはわかったので、やめた。
「だって……哲弥じゃん」
「俺だから、何?」
「だって、哲弥は他の人と違って、昔からずっと……友だち、でさ。それこそいろんなこと知ってて、子どものころは一緒に着替えてもぜんぜん気にしてなくて……」
私の抗弁を哲弥は黙って聞いていたけれど、やがて息をついて、私の上から降りた。
ベッドから離れ、部屋の入り口に向かう彼が、電気を消しに行ってくれたのかと思っていた。
「送ってく」
「……へ?」
「今日は帰りなよ。送ってくから」
そのまま玄関に向かい、棚の上にさっき置いたばかりの鍵を取る彼に――
――待って待って待って。