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君と偽りのドライブに
第16章 2‐5:蛍光灯のついた部屋
彼は微動打にしなかった。私は必死だった。
「ていうか私、哲弥もそういう……したいんだって、あんまり考えたことなかったから、それだけで割と今既にいっぱいいっぱいで」
ようやく聞けた彼の声は、静かだった。
「引いた?」
「逆」
「……逆ってどういこと?」
私は迷って、でももうここまで来てしまって、言わないというのはたぶん哲弥は許してくれない。仕方がないので覚悟を決める。
「……可愛いじゃん、だって、そんなの」
しばらく哲弥は黙って動かなかった。
ちゃんと伝わっているか不安なまま、私は彼のカーデを握り締めて待っていた。
「……言うなよ、可愛いとか」
哲弥が発した言葉はそれだった。
哲弥が身を翻して、私を抱き締めた。
その手は少し痛いぐらい強くて、哲弥らしくなかった。
哲弥はとても温かくて、熱いぐらいで、私は下腹部がきゅっと締まる感覚がした。
「俺だって一応、男ですけど」
今まで知らなかった彼の一面を――赤くなった頬を、焦れるような表情を、熱い視線を、照れてそっぽ向く筋張った首筋を、突然のキスを、下着の下で固くなる欲求を――それでいて、私を尊重しようと必死に隠そうとしてくれるところを、感じるたびに濡らしてしまう私ははしたない。