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君と偽りのドライブに
第17章 2‐6:ぜんぶ知りたい
「哲弥は私のことみんな知ってるくせに、私だけ知らないのは、なんかずるい」
彼は目を伏せて考えていたけれど、ゆっくり自分の手を私の服の中から抜いて、ベッドの端に腰掛けた。
「有紗、大学入ってすぐのとき、彼氏できたろ」
大学一年生の六月ごろ、私は同じ学部の同級生に告白されて、はじめての彼氏ができた。
はじめてを捧げた人でもあった。
結局半年ほどで別れたけれど。
「俺が、有紗に彼氏できたって聞いたのはそれがはじめてだったけど。そのとき、有紗のこといい加減ちゃんと諦めようと思って。たまたまそのとき告白してきた子がいて、付き合って」
……知らなかった。
「まあ、その、いろいろあった」
いろいろ……したんだろう。はじめての彼女と、はじめての体験を。
その子は、可愛かったんだろうか。
どんな子だったんだろうか。
私の知らない哲弥を、いろいろ知ってるんだろうか。
「けど、その子とは別れたんだね。私が彼氏と別れたから?」
「いや、その前に。やっぱ……無意識に有紗と比べながら付き合ってて、それがしんどくて。好きになる努力はしたつもりだったけど……夏休みが終わるころには、俺から頼んで別れてもらったよ」
哲弥の顔が、急に老けたように見えた。